子供の頃、父が、なにを思い立ったのか、コップにお米を入れて、「箸でつり上げろ」と言う。
「えっ?」いくら箸をお米に刺してもスルリと抜けてしまい、とてもつり上げることはできなかった。
しばらくしたら、父がお米に箸を刺して、そのコップの底を畳に軽くトントン、トントンと打ちつけた。
すると、箸を持ちあげるとコップとお米もつり上がった。
「えっ?」どうして箸が抜けないのか不思議の思った。父が説明をしてくれた。
「底をたたくと、米の隙間がぎゅっと締まるから」と。自分でもやってみたら本当に箸が抜けなくなって驚いた。
そして、こんな話もしてくれた。
『江戸時代に新井白石という学者がいた。白石が子供の頃、あまりにも怠け者だったのを父親が見かねて、目の前に正座させ、升に入ったお米を白石に見せた。
そしてこう言った。
「ここにあるお米は、一粒や二粒くらい取っても全く減ったことが分からない。
逆もそうだ。一粒や二粒加えても増えたようには見えない。
学問や武芸もこれに同じだ。一粒ずつ増やしていく、最初は増えているようには見えないが、やがては、空の升もお米で一杯になってくる。
上達したいと思うなら、気持ちだけでなく、毎日の努力の積み重ねを大切にすることだ。」と…。』
私の父は、それ以上なにも言わなかったが、子供心に父の言いたいことはよく分かった。そして、コップとお米も本題の導入に使ったことも…。
日頃あまり何かを言う父ではなかったが、新井白石とお米の話はずっと頭に残っている。
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