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パナシ

189,皆違う


「お父さん、今更だけど、子どもの頃に思ってたこと聞いて良い?」

「なんだ?聞いて良いよ。ただし、お父さんが答えられる範囲だぞ。」

「うん、お父さん、夢って何?」

「寝てから見る夢のことかい?」

「うん。僕ね、夢を見るというから、本当にこの目で見えるものだと思っていたんだよ。
おばあちゃんとか、お母さんが、『昨夜、こんな夢見た。』とかいうから、適当に『「夢って、寝てからなんとなく思うこと』かなあぐらいに思っていたんだけど、本当はどうなの?この目では見えないよね?」

「お父さんも、同じように思って調べてみたけど、『これが夢だ』、『夢とはこういうものだ』というのは無いみたいだよ。
古代では神のお告げだとか、現代ではストレスだとかいろいろ言われているけど、定説はないみたいだよ。
『蛇の夢を見たら3日間人にしゃべらないと良いことがある』とか、
『初夢は1富士、2鷹、3茄子』とか言われているけどね。
トイレに行きたくなったらトイレでおしっこしている夢見るというし。
都合の良いように言っているだけだと思うよ。」

「じゃあ、お父さんと僕が同じ蛇の夢を見たとしても、中身は違うんだよね。」

「そうだとも。」

「ああ、よかった。僕ね。ちょっと話が違うかもしれないけれど、友達の望遠鏡でこの前夜一緒に月を見たことがあるんだけど、その時、ちょっと怖くなったんだ。」

「なぜ?」

「だって、この月の今の瞬間を見ているのは僕だけでしょ?友達と同時に見ているわけじゃないし。」

「それがどうしたの?」

「僕が見たときだけ変なことがあって、友達に変わった時には、それが無くなっているってこともあるのかなあ。
そう思うと恐くなったんだよね。うまく言えないけど。」

「それで?」

「この頃、言葉でも『分かった。』と言っても細かく詰めると違うんだと分かったんだよ。
『この料理美味しい』と言っても何が美味しいのか、実は人によって違うってこと。」

「おお凄いじゃないか。お父さんもそれは実感するよ。
今の子供たちにとって経験や思考力が大切だと言われているけど、例えば、全体では皆が賛成でもそれぞれが思っている内容は違うからなあ。
それをもっと詰めようとすると、それぞれの主張が違うから話にならなくなってしまうことよくあるよ。総論賛成、各論反対ってやつだよ。」

「えっ?お父さんもそうなの?」

「人によって、違うんだよ。」

「じゃあ、夢と同じだね。はっきりこの目で見えないから、捉え方が違っちゃうからね。」

「おお、ヒデちゃんもすこし大人になったなあ。」

「お父さん、大人になったって、どういうこと?大きくなったってこと?賢くなったってこと?」

「それは自分で考えなさい。」

「賢くなったってことで良いの?」

「ああ、そういうことだ。」…

お父さんにとっては、まだまだ心配なヒデちゃんでした。


作成者: パナシ

雑学大好き、何でもやりっぱなしが多い。

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