「お父さん、この煎餅、美味しいね。」
「そうだろう。近くのお店になかったから、わざわざ大きなスーパーまで言って買ってきたんだよ。」
「黒豆の歯ごたえと香りが良いね。何処の製品?」
「袋の裏を見てごらん。」
「うん。….新潟県長岡市…岩塚製菓って書いてあるよ。」
「実はこの会社、すごい話があるんだよ。」
「なに?教えて!」
「ヒデちゃん、煎餅に販売世界一ってどこだと思う?」
「そりゃ日本でしょ?」
「お父さんもそう思っていたけど、これが違うんだな。」
「じゃあどこなの?」
「それが、台湾なんだよ。」
「そうなんだ。」
「この台湾の会社は旺旺(ワンワン)というんだけど、この会社はもともとは水産加工していたんだ。
息子の蔡衍明(サイホンミン)さんが北海道にイカの仕入れに来たんだよ。
その時、この岩塚の煎餅に出会い、その味にほれ込み、わざわざ新潟の岩塚製菓まで行ったんだよ。
そしたら岩塚製菓の社長の槇計作さんが丁寧に米菓製造の技術指導をしてくれたんだよ。
今から約40年位前のことだけどね。その後も技術指導は続けられ、旺旺は成長をし続け、上海に本拠を置く巨大会社になったんだよ。」
「そうなんだ。」
「旺旺グループの商品は、今や世界56か国で販売されていて、『米菓生産量世界一のメーカー』なんだってさ。蔡代表は槇元社長を「旺旺の父」と呼び、旺旺グループの上海本部の1階ロビーには、岩塚製菓の槇計作元社長の銅像が置かれているらしいよ。」
「すごく良い話だね。」
「もっとすごいのは、旺旺企業の株を岩塚製菓はその5%を保有しているから毎年22億円位の配当を受けているんだってよ。」
「ふーん。」
「この話を思い出しながら食べると、この煎餅ももっとおいしく感じるよ」
「お父さん、良い話をありがとう。蔡さんも元社長の槇さんもすごい人たちだね。やっぱり人には親切にするのが一番だね。僕も槇さんのような人に出会えるといいなあ。」
「ああ、そうだね。まずは、蔡さんのように逞しくなることかなあ。」
「うん。頑張るよ。」