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313,みんなでやろう!

真っ白な壁に落書きが…

落書きは、どんどん増えていく

書かれた場所は、所選ばず、広がっていく…どうしたらいいんだ?


歩道のわきの空き地は、いつの間にかゴミ捨て場に…

冷蔵庫、自転車、バイク、テレビ、ありとあらゆるゴミが…どうしたらいいんだ?

伸び放題の雑草…

ずっと続く雑草道。毎日こんな風景を見ていたら…

初めて校長として着任した友達は、学校周辺の光景に唖然とし、ただ立ち尽くすしかできなかった。「子どもたちに決して良い影響があるとは思わない」…

 友達は、手始めに落書きを消そうと考えた。
だが、消すことはできなかった。

市役所の道路管理課、警察署、道路公団の許可を得なければ消せないのである。

それぞれの部署に連絡を取ると「いやあ、うちだけでは…」とたらいまわし状態。
ならば、三者を同時に学校に呼んで…
ここで威力を発揮したのが「校長」という肩書。個人では絶対に相手にしてもらえなかったであろう。
 三者が協議し、道路公団が、落書きを消して、新しく塗りなおすことになった。が、
「そのままでは、新しいキャンバスを与えたことになり、また落書きされる可能性がありますね。どうでしょうか、うちの学校の子供たちに絵を描かせるというのは?」
「学校の方からそう言っていただけると、大変ありがたいです。」

ペンキ、刷毛などは、道路公団がすべて提供してくれることになった。
また、今後落書きがあった場合、簡単に消せそうなものだったら、子供たちと一緒に消してよいことも確認した。
 学校で職員に報告すると、
小学生なので放課後子供たちをあまり動かせないこと、
全体像が見えない、やることがちょっと大きすぎる、
学校のやることなのかどうか…

反対もあったが、地域の教育力、教育環境、自身の思い等で何とか説得した。
 6年生、2クラスの代表者、児童会と協議し、テーマはすぐ近くの「海」と学校の重点取り組みの「交通安全」に決まる。
全校児童に図案を書いてもらい、6年生がその中から選んで描くことになった。
監督は校長と用務員の二人。

全校の保護者に計画を示し、特に6年生の保護者には「子ども達の協力」を丁寧にお願いした。
さあ開始!おおよその場所割、鉛筆やマジックを使って下絵づくり。そしてペンキ塗り。
思ったようにうまく描けなかったり、ペンキ塗りしたその夜に雨が降り、湿気で絵が流れてしまったり…修正は、先生方も手伝ってくれた。

始まると、子ども達は、夢中で楽しそうに活動していた。

交通安全を担当した班

海を担当した班

 やがて、新聞、テレビ放送などマスコミにも注目され、子ども達も「卒業制作」として自信をもって作成していた。
これを機に地域の学校への協力姿勢も強まったように思う。
 続いて、ゴミ捨て場になっていた場所は、港湾事務所の持ち物だということが分かり、さっそく連絡をとってみた。
「ゴミ捨て場、雑草は何とかならないでしょうか?」と話してみると
「職員が二人しかいなくて、手が回らないんです。」と、

「じゃあ、一緒に草刈りやりましょうよ。私たちも手伝いますから…」
2、3日かけて、用務員さんと港湾事務所の方と三人で草刈り作業を一緒にやった。
地域の人「きれいになるね。ありがとう!」と飲み物を差し入れてくれることもあった。
「この土地、毎年の手入れが大変でしょうから、誰かに貸して管理してもらったらどうですか?」
「はい、その方が助かるんですが…」
「すごそこに、造園屋さんがあるんですよ。私もお世話になっていて、よく知ってますから、『自由に使って良い』と、話していいですか?」
「お願いします。」
その後、話をした造園屋がそこを手入れし、毎年綺麗な花を植えて、通行人の目を楽しませる花壇にしてくれた。
粗大ゴミなどの捨て場になっていた空地も港湾事務所からの連絡で、きれいに片づけてくれた。
あれから20年あまり、トンネルの絵も描いた子供たちの名前のプレートも花壇も空地も奇麗に保たれている。

「みんなでやったなあ。」

良い思い出であること、
そして、例えば校長とか、その組織の長になった時、「それで上がり。」と思っている人がいるかも知れないけれど、そこからの本当の仕事があるんだよ。その立場じゃないとできない大きな仕事がね。子供たちのためにも自分や職員の発想力を磨かなきゃ…そう思っているよ。」と
友達はしみじみ話してくれた。

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312,運動会

今日は、待ちに待った運動会。天気も晴れていい感じ。みんなウキウキしています。
2000人以上の人々(児童、保護者家族)がワイワイガヤガヤ全く統制が取れない。「これから開会式を始めます」のアナウンスも効果なし。
朝礼台にのぼった校長先生は、深く礼をした後、手に持った細長い棒を振りまわし始めました。
ビューン、ビューンと音を立てながら棒の型を始めました。すると、あれだけざわついていた校庭がピタッと静まり返りました。…みんな朝礼台の方を向いています。
終わった時には拍手が起こりました。
校庭が静かになったので、校長先生は、開会式の挨拶を始めました。
「保護者の皆さん、本日は… 
近隣の皆さん、今日まで練習の騒音でご迷惑を…」
紅組の諸君、今年は特に張り切っていると聞きました。走っている近くの電車が止まるくらい大きな声で気合を入れて頑張ってください。
「おー!」
白組の諸君、今年も優勝を狙っていると聞きました。近くの川の魚たちがびっくりして飛び上がるほど、大きな気合を入れて頑張ってください。「おー!」
では、運動会を今から始めます!
「紅勝て!」「白勝て!」
こうして、この日の運動会は楽しく行われました。

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311,心に鍵をかける


 
 ある中学校で屋上から生徒が転落すると言う事件があった。
屋上で遊んでいて、隣の棟に跳んで移ろうとして、落ちたらしい。
幸い樹木の植え込みに落ちて命は助かったものの、その校長は責任を追及されたらしい。

その校長は、長年、生徒指導畑で活躍していた人だ。

「屋上には鍵をかけない。『屋上には断りなく入らない』と表示したうえで

『火災等の時の避難通路にもなるのだから、また、教育活動でも使うこともあるだろう。

入れないように鍵をかけるのではなく生徒の心に鍵をかける。』そうでなければ屋上なんて必要ない。」
その校長の言葉は重く市内の校長たちもそう思っていた。
 が、この事件があってから、市内の各学校に調査が入った。
すると、なんとこの学校以外は、全部屋上に鍵をかけているという回答。手のひら返しというか…。
 大阪の池田小学校で不審者が入り、児童を殺傷した事件の後、全国どこの学校でも校門を施錠するのが当たり前になった。
施錠すべき?
 が、東日本大震災が発生した後は、校門は、地域の避難場所になることから、がっちり施錠はせず、門を閉めて、表示で「無断で入らないでください」とか防犯カメラを設置等、緩めになった。

学校の門に関しては、防犯と防災とでは、考え方がまったく正反対。世間の風潮によってどちらの考えを重視するかが左右されている。
『人の心に鍵をかける』と言ったあの校長さんの熱い口調が忘れられない。

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310,命令ゲーム


「お父さん。今日学校でね、チャイムが鳴っても、みんなざわざわしていて授業がすんなり始められなかったんだ。」

「そうなんだ。」

「そしたら先生が『今から命令ゲームをやります。』と…

命令と言われたら、その通りにするんだよ!

みんな『えっ?』て思ったけど先生がどんどん進めて行って

『命令と言ったら、それに従ってください。命令と言わなかったら無視していいです。』

面白そうだったので、みんな『はい!』と…

『では、行きます。…命令、立って! 命令、座って!』

『命令、右手を上げて!』

『ハイ、下げて!』何人かが手を下げたんだよ。引っかかった人を皆が笑って…。

『命令、目を閉じて!』…

『先生、長いよ。』

『では、命令、目を開けて!』

『命令、授業に入ります。』

先生の言うことをよく聞いてないと間違えるから、教室はすっかり静かになって、授業がすんなり始められたんだ。」

「先生も考えたね。」

さあ、始めるよ。

「お父さん、僕ね、気が付いたことあったんだよ。」

「なに?」

「普段の生活でも、先生が、いちいち『命令』と言わなくても『ハイ、皆さん~しましょう、してください…』って命令ゲームと同じだなあって思ったんだよ。」

「ああ、そうか、良い所に気が付いたね。」

「うん、だから、『ハイ、皆さん、こちらを見てください。ハイ、こちらからお入りください。ハイ、これに記入してください。』なんか、『命令』が『ハイ』に変わっただけで、言葉は丁寧だけど、命令ゲームだなあ。そう思ったんだ。」

「そう言われれば、ヒデちゃんの言うとおりだな。いいとこに気が付いたじゃないか。」

「うん」

おいしそうでしょう?

すると、お母さんが、

「ハイ、あなた、今日は、南瓜よ。」

ヒデちゃんは笑いながら

「命令、南瓜を食べて!」ということだね。お父さん。」

「そうだな。ハハハ」

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