
「お母さん、テレビに出る人って大変だね?」
「何が?」
「だって、毎日、同じ洋服は着られないでしょ?」
「ああ、そのことね。」
「毎日出ている人って、お金はもちろんだけど、洋服をしまう場所だって大きくて広いんだろうなあって思うの。」
「そうね。」
「私、タレントになりたいと思っていたけど、それを考えたら、気が重くなっちゃった。」

「恵ちゃん、あなた、そうなんだ。タレントにねえ。知らなかったわ。」
「お父さんには言わないでね。馬鹿にされそうだから…」
「分かったわ。」
「それでね、お母さん、ニュースを読むアナウンサーや天気キャスターのお姉さんなんか、毎日違う服だし、同じもの着ているのは見たことがないでしょ?」
「そうだね。」
「私、自分が毎日、今日は、何着るかって考えるだけで、頭がおかしくなっちゃう。それに自分に合う洋服をたくさん買いに行くのも大変だし…。」
「男の人は、ネクタイを変えるくらいで良いけど、女の人は大変だと思うわね。」
「制服の方が、私は楽だなあ。」
「お母さんも、若い頃、そう思ったこともあったけど、どうも、専門の人が付いているらしいわよ。局や番組や人によっても違うらしいけど。ある局では、衣装担当やスタイリストがいて、番組によっては、1週間分の衣装が一度に用意されていて、その中から選ぶそうよ。」
「へえ。」

「メイクさんもいるから、スッピンで出社する女性アナも多いとか聞いたわ。」
「衣装、アクセサリ、靴などは、完全にスタイリスト任せらしいわよ。」
「まるで着せ替え人形みたいだね。」
「もちろん自前の人もいるらしいけど、いろいろあるみたいね。」
「どうせなら、私は、腕の良いスタイリストさんがいいなあ。」
「それに、スタジオからの放送やバラエティの屋外ロケでの衣装は、基本的に借り物が多いと聞いたわ。」
「そうなんだ。少し気が楽になったわ。」
「そう?じゃあ、安心してタレントを目指したら?」
「お母さん、お願い、私のスタイリストになってくれない?」
「タレントになったらね。けど、『この服は嫌だ!』とか、わがまま言っちゃダメだわよ。」
「もちろんよ。」
「じゃあ、恵ちゃん、まずは心を磨かなきゃね。」
「うん。」
「じゃあ…お風呂の掃除頼んだわよ。未来のタレントさん。」
「えっ?…分かった。後でやる…。」…
「そういう目線で見ると、東京都知事の小池百合子さんは、この所ほとんど、東京都の仕事着だわね。何か意図があるのかしら…仕事中であることをアピールしているのかしら?」お母さんはそんなことまで考えてしまいました。

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