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昔々、ある村での話です。
村の中に、一人の嘘つきがいました。
「あいつには困ったものだ。嘘ばっかり言っている。
昨日言ったこともすぐ翻すし…。
自分で言ったことにも責任を全く持っていない。
もう何百回というほど嘘つきまくっている。」村人は会うとその話をしていた。
その嘘つきの男が言うには
「俺は嘘をついていない。嘘を言うわけがないだろう?」と開き直ってまたこうやって嘘をついている。
実際、その嘘つきに、村は振り回されていた。
「あいつは…」「あいつの家内は…」と、陰で彼に対して文句を言う人がたくさんいるが面と向かっていう者がいない。
そんな折、一人の長老がこんなことを言った。
「あいつは、嘘つきじゃないよ。
ただ…」
「ただ、何?」
「大きな声では言えないが、前に言ったことや、やったことを覚えていないだけだ。
…覚えられないんだよ。
病気というか、本当のバカなんだよ。
…みんな奴を普通の人間だと思っているから腹が立つんだよ。
…前のことは、すぐに忘れるバカ者だと思えば納得できるだろうよ。」
それを聞いていた人は
「ああ、そうなんだ。確かに言っていること、やっていることに一貫性がないし、その場の思い付きで、勝手に大口をたたいているだけなんだ。
…そうなんだ。すぐ忘れちゃうんだ。」
長老は続けて言った。
「こういうバカは、利用するには一番いい人間だ。
おだてて、誉めまくって…『あんたが一番』にしておけばいい。そうすれば、こっちが考えてることを、みんなやってくれるから…。
だから村の中心にいられるんだよ。操り人形にされていることすら分かっていないからな。」
「だけど、こういう人が村の中心にいたらみんな困るよなあ。」
長老は答えた。
「だから、こっちも奴をおだてて利用するか、言うことをまったく信用せず無視するか…だろうなあ。
だが、気をつけろよ。こういう奴は、意外と、言われたケチは、根に持つタイプだから、取扱注意だぞ。」
「村の恥さらしだよなあ。」
「まてまて、ああいう奴をのうのうと生かしているこの村も俺達も一緒ということだよ。」
「それにしても、誰が今、奴を操っているんだろうか?」
長老は答えた。
「みんな、うすうすは感じているだろうよ。隣の村の奴らかも知れないしなあ。」
「ああ、確かに…」
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