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パナシ

279,人前で恥をかかねば

ある会社での一光景です。

 課長から
「田中君、ちょっといいかい?」と声をかけられた。
「はい。」
誰もいない会議室に連れていかれた。
なんとなく嫌な予感がした。

「実はなあ、今度の課の発表会をメインでやってくれないかなあ。」

「えっ?僕がですか?」

「そうだ。」

「課長、待ってください。僕より有能な人が他にたくさんいるじゃないですか?」

「色々考えたんだが、君しかいないんだよ。どうだ、他人を当てにせず、自分の力を試してみないか?」

「そんな、僕にはうまくできる自信がありません。」

「あのなあ、田中君、人間、人前で恥をかかなきゃ伸びられないんだよ。分かるだろう?」

「はい。」

「決して上手くやろうと思わなくていい。7,8割でいい、後は楽しむことだよ。」

「はい。」…

「稽古事でもよく言うだろう?『負けて覚える相撲かな』とか。失敗してもいいんだよ。そうやってみんな力を付けていくんだよ。」

「それは、分かりますが…」

「大丈夫、みんなが協力するから…」

「でも…」

「『でも…』じゃない。『はい、やります。』となぜ言えないんだ。
…今日の午後の会議で皆にこの件を報告するから、覚悟を決めておけよ。いいチャンスだぞ。」

「分かりました。力不足ですが、何とかやってみます。」

「よし、決まりだ。気張らずやればいいんだよ。うまく行かなかったら首になるとか、会社が潰れるということはないんだから…。
 少しずつ構想を練ってくれ。必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。」

「はい。」

「『練習は本番のように、本番は練習のように』だな。頑張れ!」

「はい。」


作成者: パナシ

雑学大好き、何でもやりっぱなしが多い。

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