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「クーン、クーン」
「太郎、どうしたんだ?どこか痛いのか?」
「違う。」
「じゃあどうした?」
「言っても分かってもらえないと思うけど、おいらの悩み聞いてくれるのかい?」
「犬の悩み?」
「そうだよ、悪いか?悩んじゃ?」
「いや別にいいけど。悩みって、何なんだい?」
「俺も他の犬もそうだけど、鎖で繋がれているだろう?」
「ああ、逃げちゃったり、人に危害を加えたりする犬がいるからなあ。」
「俺は、そんなことはしないよ。」
「そうかい?」
「当たり前だろう?俺にだって意地があるんだよ。」
「へえ、そうなんだ。」
「でね、その鎖を力づくでほどきたいと思うときがあるんだよ。」
「で、ほどいてどうするの?逃げるのかい? 」
「だから逃げないって。」
「じゃあ、何の為に?」
「上手く言えないけど自由が欲しいんだよ。」
「えっ?自由?」
「そうだ、自由だ。猫もカラスも狸もみんな自由じゃないか?繋がれてるのは俺たち犬だけだぞ。
こんな不平等なことがあるかよ。全国動物会議にかけてやる。」
「動物会議ってそんなのあるのかい?」
「ある、無かったらこれから俺が作る。」
「すごいね。…だけど、そう言えばそうだな。繋がれているのは、犬だけだなあ。」
「俺たちの調べによると、
昔、江戸時代には、繋がれていたのは猫なのに、ちょっと人に害を与えるやつがいるからと、俺たち犬の方が繋がれる羽目になっちゃったんだよ。俺は悲しいよ。」
「じゃあ、放してやろうか?餌も自分で取るのか?」
「ちょっと待ってくれ。そこだよ。俺の悩みは。」
「はあ?どういうこと?」
「繋がれていれば、ご主人が毎日餌をくれるけど、自由の身になったら、自分で餌を見つけなければならないこともあるだろう?
そこだよ、俺の悩みは?自由を取るか?安定した生活を取るか?毎日考えているんだけど、結論が出ないんだよ。」
「自由か?安定か?なるほどね。…」
「どうだ?高尚な悩みだろう?」
「ああ、実は、俺達人間だって、太郎と同じなんだよ。
見えない鎖に繋がれて、…自由も欲しいし、安定した生活も欲しいし…。同じだよ。
なあ、太郎、猫の花子は、どう思っているか、今度聞いといてくれよ。」
「聞くって?俺のことどう思っているのかってか?」
「違うよ、自由と安定についてだよ。」
「難しいなあ、あいつら猫はバカだから、そんなことは考えないだろうよ。」
「そうか?この前、花子は、犬の方がバカだと言ってたぞ。」
「嘘つけ!今度会ったら、噛みついてやる。」
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