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パナシ

345,犬の嘆き

「クーン、クーン」

「太郎、どうしたんだ?どこか痛いのか?」

「違う。」

「じゃあどうした?」

「言っても分かってもらえないと思うけど、おいらの悩み聞いてくれるのかい?」

「犬の悩み?」

「そうだよ、悪いか?悩んじゃ?」

「いや別にいいけど。悩みって、何なんだい?」

「俺も他の犬もそうだけど、鎖で繋がれているだろう?」

「ああ、逃げちゃったり、人に危害を加えたりする犬がいるからなあ。」

「俺は、そんなことはしないよ。」

「そうかい?」

「当たり前だろう?俺にだって意地があるんだよ。」

「へえ、そうなんだ。」

「でね、その鎖を力づくでほどきたいと思うときがあるんだよ。」

「で、ほどいてどうするの?逃げるのかい? 」

「だから逃げないって。」

「じゃあ、何の為に?」

「上手く言えないけど自由が欲しいんだよ。」

「えっ?自由?」

「そうだ、自由だ。猫もカラスも狸もみんな自由じゃないか?繋がれてるのは俺たち犬だけだぞ。
こんな不平等なことがあるかよ。全国動物会議にかけてやる。」

「動物会議ってそんなのあるのかい?」

「ある、無かったらこれから俺が作る。」

「すごいね。…だけど、そう言えばそうだな。繋がれているのは、犬だけだなあ。」

「俺たちの調べによると、
昔、江戸時代には、繋がれていたのは猫なのに、ちょっと人に害を与えるやつがいるからと、俺たち犬の方が繋がれる羽目になっちゃったんだよ。俺は悲しいよ。」

「じゃあ、放してやろうか?餌も自分で取るのか?」

「ちょっと待ってくれ。そこだよ。俺の悩みは。」

「はあ?どういうこと?」

「繋がれていれば、ご主人が毎日餌をくれるけど、自由の身になったら、自分で餌を見つけなければならないこともあるだろう?
そこだよ、俺の悩みは?自由を取るか?安定した生活を取るか?毎日考えているんだけど、結論が出ないんだよ。」

「自由か?安定か?なるほどね。…」

「どうだ?高尚な悩みだろう?」

「ああ、実は、俺達人間だって、太郎と同じなんだよ。
見えない鎖に繋がれて、…自由も欲しいし、安定した生活も欲しいし…。同じだよ。
なあ、太郎、猫の花子は、どう思っているか、今度聞いといてくれよ。」

「聞くって?俺のことどう思っているのかってか?」

「違うよ、自由と安定についてだよ。」

「難しいなあ、あいつら猫はバカだから、そんなことは考えないだろうよ。」

「そうか?この前、花子は、犬の方がバカだと言ってたぞ。」

「嘘つけ!今度会ったら、噛みついてやる。」

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作成者: パナシ

雑学大好き、何でもやりっぱなしが多い。

「345,犬の嘆き」への1件の返信

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