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右と左と東西南北
もう何十年も前に、東京から鹿児島まで自動車で行ったことがある。
朝早く、東京を出て、夕方には、一泊目の姫路に着いた。
ナビゲーションのない時代だったので、地図を頼りに、予約したホテルを探したが、なかなか見つからない。
自動車を降りて、歩ている人に道を聞いた。
「ああ、このホテルかいな、ここからやと、東南の方向にあるんや。」と指で空を指し
「このでっかい道路は、東に向いて行ってるさかいに、この道をどーんと行きはってな、4つ目の信号を南に、またどーんと行ってな、2つ目の信号を、今度な東に行くんじゃ、暫くどーんと行きはったら、でっかい看板が出てくるけん、子どもさんでも、よう分かりはる。」
「お宅さんらどこから参られたんじゃ。」
「東京です。」
「言葉で、そな思ーたけどな。気ーつけて、行かはってな。」
「ありがとうございました。」
「ほな!」
50代くらいのおじさんだったが、説明が分かりやすかった。絶対方角の東西南北を使っているから、大方の位置を間違えることはない。
普段、私たちは、右、左で説明したり説明を受けたりしているが、これは迷子になりやすいし、話している人の右は、私の左だし、迷子になっても、なかなか元に戻れない経験もよくした。特に方向音痴の私には、辛いものであった。
姫路のあのおじさんから、東西南北での道案内を学んだが、よく考えると、東西南北は、比較的大きな道案内に、右、左は、小さな、近い場所の道案内に有効であることが分かった。
似ているが、その違いに気が付いた。江戸川東高校はあっても江戸川右高校や江戸川左高校はありませんからね。また、教室で、右隣の人と言えばすぐわかりますが、東隣の人というと、一瞬考えてしまいますね。…。
現在、ある意味で、『右、左だけで生活できる』私たちは、昔より狭い環境で過ごしているということなのでしょね。
それにしても、あのおじさんの「どーんと行く。」には驚いた(猛スピードでいく?ではなく、まっすぐという意味だと分かる)が、味のある言葉であり、その言葉だけでその時のことが思い出される。
♪恋人よー僕は旅立つ、東へと向かう列車でー♪
追加:京の都には、右京や左京があるが、これは、天子様の都に限って、そこを仕切っているのは、神(自然)の内にありながらも天子様(人)を中心にしているという意味合いなのではないかと思われる。
さらに、うがった見方をすれば、右、左は、格調高く庶民は勝手に使えなかったのではないか、特に京の都に近い場所では使えなかった、そのなごりが、姫路のおじさんの道案内に残っていたのでは?左大臣、右大臣、左近、右近、左衛門、右衛門…なんとなく詳しくは、わからないが、自分なりに納得。右、左という言葉や文字は、今ほど自由に使えなかったのかも?フーン、そうなんだ。皆さんはどう思いますか?
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