カテゴリー
パナシ

321、2対1


  ちょうど今、空手の型の審査が武道館で行われている。

「3対ゼロ、赤の勝ち!」…

「2対1、白の勝ち!」…

3人の審判が一斉に紅白どちらかの旗を挙げる。数多く上がった方を勝者とする。武道等の試合では、似たような形式が多い。

 3週間後にジュニア大会を控え、この道場でも練習に励んでいた。

「今日は、大会と同じ試合形式で勝ち負けを判定する。審判は、田中師範、久本師範、藤木師範の3名。

名前を呼ばれた拳士(選手)は、大きな返事をして、前に出て演武するように、周りで見ている者は、自分が審判だったらどちらに旗を上げるか、胸の中で考えながら演武を見るように。

なお、今日は、旗がないので、右手が赤、左手が白とします。

では、全員起立!正面に礼!お互いに礼!」

呼び出しの係が
「これより、型の部に入ります。」…「赤、小林太郎!」
「ハイ!」 
「白、大石大貴!」
「ハイ!」
二人が並んで礼をし、場が落ち着いたら「入ります!どうぞ!」二人の型の演武が始まります。

 二人の型が終わると、主審が「判定!」と叫ぶと同時に他の審判が、優っていると思う方の旗を挙げる。

「2対1、赤の勝ち!…一礼して下がって!」


 次の対決練習は、花本君と木村君の小学3年生同士の対決だ。私は、二人の演武を見て、全体を見ると恐らく、白の花本君が「3対0」で勝つだろうと思っていた。
そこで私は敢えて、部分演武の良かった赤の木村君に手を上げた。主審の久本師範が「2対1、白の勝ち!」…。

 その後、ほかのメンバーの型、組術、組手など、全員の対戦が終わった。

 休憩の時、赤の木村君がツカツカと私に寄ってきて

「手を挙げてくれてありがとう。」

私は「上手かったよ。特に、突き蹴りの勢いが花本君より良かったよ。」と演武の部分を誉めた。そして、「試合当日は、会場の雰囲気に飲まれないようにもっと大きな気合を出した方が良いなあ。」

「ハイ!」。

もし、私も花本君に挙げていて「3対0」で負けていたら、木村君は、しょげて自信を無くしていたかもしれなかった。こんなに素直に私の話も聞かなかっただろう。

 3週間後、本番のジュニア大会で、木村君は、なんと準優勝を果たした。

おそらく、3週間前のあの日、家に帰ってから木村君は、ビデオを見たり、自分の課題練習に励んだのだろう。
あの時の私の彼への甘い判定が少しは役に立ったのかなあ。
そう思うと嬉しい。
それにしても子ども達は、一旦自信を付けると、それがエネルギーとなって大きく成長する。
大会の審判も、細かく見ると色々である。全体で見る審判、部分で見る審判、気合、勢いで見る審判、正確さで見る審判、自分の道場の選手には絶対に挙げない審判…。子ども達は、そういう洗礼を受けて上手くなっていく。
伸びるきっかけがどこにあるのか、なかなか分からない。

カジタク 家事代行サービス