「お父さんこれ漢字なの?」
「うん、どれどれ?」ヒデちゃんが出したものは
「卍、これ。」
「ああ、この字は『まんじ』という漢字なんだよ。」
「へえ、漢字なんだ。で、意味はどういう意味なの?」
「辞書では、中国で万の字の代わりとして用いられたことから万の字の意味なんだよ。」
「万の字からまんじか。」
「うん、そのもとはインドでヴィシュヌ神などの胸の繊毛を意味し吉祥(幸福)の印とされていたんだよ。仏教に関係するものとして中国を経て日本に入ってきたんだ。
日本では地図記号でお寺院を表しているよ。お寺の記号をこれにしたのもそこからだろうな。
正しいかどうかわからないけど、少林寺拳法をしているお父さんの友達が言うには、
「左まんじ卍」(左回り)と「右まんじ卐」(右回り)があって、写真の上のように力を崩していくと「右卐」になるからこれは『力』を意味している、と言ってるよ。


その反対の「左卍」は『力』の反対の意味である『愛』を表しているという。
英語の『Life(人生) Live(生きる) Love(愛) Light(光)の4つのLの組み合わせで出来ている』と考えたんだ。
人は力だけ持ってもいけないし、愛情だけでは弱すぎる。
この世の中は人が作っている。ならば、人の質を上げなければ人の世は良くならない。力と愛が表裏一体の人づくりを目指して、戦後の荒れていた日本を見て、宗道臣という人が少林寺拳法を始めたというんだ。『力愛不二』とか彼は言っていたなあ。」
「確かに、右卍は力に見えるよね、お父さん。反対が4Lか、なるほどなあ。良く分かったよ。」
「あとで、お父さんも気になったので調べてみたら、この卍は、ギリシャ、ポーランド、フィンランド、ドイツ、スウェーデン、インド、北米、カナダ、中国、日本等、世界各国で使われていたんだね。
日本では、家紋にも使われていたし、今でも弘前市は市章に左卍を使っているらしいよ(津軽氏の家紋から)。意味もそれぞれその地その地で違っていたようだよ。
これは、記号が簡単だから(鎌や折れた棒を4つ組めばできるから)だから、どれが始まりで、とか意味はこうでないといけない、ということはないんだと思うよ。
お父さんは、右卐も左卍も吉祥印で力と愛を表しているというのが一番いいなあ。と思っているよ。
ドイツのナチスが右卐と同じものをハーケンクロイツとして使用したことから嫌なイメージを持つ人も多いけど、記号そのものは昔からあるものだし、悪くはないと思うなあ。
ちょうど今、新型コロナウィルスで『コロナ』と聞くと嫌なイメージを持つけど『コロナ(光冠)』自体は良い名前で自動車や会社の名前にもよく使われていたからね。それと同じだよ。」
参考:
・最も古いと知られている卍はウクライナのメジネで発見された、旧石器時代の紀元前1万年に象牙で彫られた鳥の置物での複雑なパターンの一部。
・ブルガリアの洞窟では紀元前6000年頃に儀式で使用されたと思われる対になった左向きと右向きの卍と卐が発見された。
・インド亜大陸では紀元前3000年頃より考古学的証拠が見られる。
・ドイツのハインリヒ・シュリーマンはトロイの遺跡の中で卍を発見し、卍を古代のインド・ヨーロッパ語族に共通の宗教的シンボルと見なした。
・ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の胸の旋毛(つむじ)、仏教では釈迦の胸の瑞相が由来で、左旋回の卍は和の元といわれ、右旋回の卐は、力の元といわれる。メソポタミアでも先史時代から見られ、その後アッシュルの新アッシリア神殿に天然アスファルトで描かれている。
・台湾では台湾素食専門店を表すマークとして看板に表示した食堂、レストランを多くの街角にみることが出来る。
・浮世絵師の葛飾北斎が名乗った号にも「卍」というのがある。(引用:ウィキペディア)
追加:若者たちが使う「まじ卍(まんじ)」の意味は?
「まじ卍(まんじ)」とは、「マジ」+「卍(まんじ)」が結合した若者言葉。
その意味は一言でいうと、気分の盛り上がりをあらわす感情表現です。
別の言葉で言い換えるならば「マジマジー!」「マジやばい!」あたりでしょうか。

