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パナシ

213,ハンカチ事件

2人のサラリーマンが、飲みながら話している。
「うちの坊主小学校2年生になるんだけど、クラスでこんな事件があったんだよ。」
「なに?…なに?」

 ある月曜日の朝、「ねえ、みんな見て!奇麗でしょ?昨日ディズニーーランドに行って買ってもらったんだ。」

「わあ、いいなあ。梅ちゃん」
梅ちゃんは、みんなに自慢して見せました。

3時間目の体育が終わって、自分の席に行ってみると机の上に置いたあのハンカチがない。

茉莉ちゃんが持っていた。

「私のだから返して!」
梅ちゃんが言うと、茉莉ちゃんが

「何言ってんの?お母さんに買ってもらった私のものよ。」

周りも「茉莉ちゃん、返しなよ。」と言うが、

「私のをなぜ返さなきゃいけないの?」

梅ちゃんは、泣きだしました。

今年、初めて教師になった担任の先生は、梅ちゃんやみんなから話を聞き、茉莉ちゃんを廊下につれていき

「梅ちゃんも泣いているし、もう返してあげなよ。」と優しく言いました。

「どうして私のハンカチを返さなきゃいけないんですか?」…

「じゃあ聞きますよ。いつ買ってもらったの?」

「昨日です。」

「じゃあ、お母さんに電話していいですか?」

「いいですよ、本当のことなんだから。」

「あっ、時間だ。じゃあ、また後で話聞くから、4時間目の用意して!」

「はい。」

担任の先生は、先輩の先生に相談しました。

「その場でのタイミングをはずしたのか…。
お母さんに連絡して、話してみたら?」

「でも、あのお母さん、去年も何かトラブルがあって学校を信用していないと聞いてます。
たぶん、連絡しても『うちの子を泥棒扱いにするんですか?』と言われそうで、恐いんです。
…もう一度、茉莉ちゃんと話して見ます。」…

 昼休みに担任は、また茉莉ちゃんに聞いたが、「私のもの」と言い張っているという。

先輩の先生は、「こうなったら、お母さんに連絡するのが一番いいんだけど、それが、さらに大きな問題になると思うなら、梅ちゃんと茉莉ちゃんを別々に考えようか?」

梅ちゃんには、新しいハンカチを帰りの会までに用意しておくよ。
茉莉ちゃんは、少し時間をかけて指導するしかないね。
本当は、茉莉ちゃんを絞って白黒はっきりさせたいけど、学校は警察じゃないからなあ。
意地の張り合いになっちゃっているし…」

 新しいハンカチをもらった梅ちゃんは、前のハンカチよりも奇麗で喜んでいました。
梅ちゃんのお母さんには、電話で事情を話し、納得してもらいました。
そして、「持ち物には、必ず名前を記入させてください。」とお願いしました。

 その後、何日か経った頃、保護者会があり、梅ちゃんのお母さんには感謝されました。「あのお母さんとは関わりたくなかったんです。」とも…。

担任の先生は、茉莉ちゃんのお母さんには「もうだいぶ前のことですから叱らないでください。実は…」と正直に話しました。

「まあ、あの子は、また、そんな嘘を…、私も茉莉の持ち物を少し気を付けてみます。
今度そういう時は、先生、すぐに連絡してください。」

「何とか解決したから良かったみたいだけど…お前は、どう思う?」
「だめだよ。こんなの教育じゃないよ。上面だけ解決したってダメだよ。人のものを取ってはいけないことを教えなきゃ。
その場で『返しなさい!』あるいはハンカチを出させて、それを梅ちゃんに渡して、茉莉ちゃんがあまり言うようだったら『そんなに欲しいなら、今度お母さんに買ってもらって!先生からも言ってやろうか?』…『ハイ、この件はこれで終わり!』。で十分だよ。
親とか関係ないよ。大人の世界でも、その場で、時間をかけず、人も入れず、大袈裟にせず…それが鉄則だろう?
絶対に白黒は、はっきりさせるべきだよ。でないとその子は甘い汁を吸ったことになり、また、同じようなことやるんじゃないか?」
「俺も最初は、そう思ったよ。でも、学校のやり方の味方をするわけじゃないけど、親の顔がちらついて、最初にそれをやらなかったから、意地の張り合いになっちゃったんだろうな。
もし、そのことでその子が不登校にでもなったら、また別の問題で大変だと考えたんじゃないのかなあ?」
「こんなの幼稚園か保育園レベルの問題だから、子供の言い分を聞き過ぎずに、良いこと、してはいけないことは、毅然としてガツンと指導すべきだと思うけどなあ。」
「そこが難しとこなんだろうな。子どもって、みんな素直でいい子ばかりだと思うだろう?保護者もみんな学校の方を向いていると思うだろう?」
「違うのか?」
「正邪をはっきりさせ過ぎると、不登校になったり、親との関係がもっと悪くなったり、スッキリ行かないことが結構あるみたいだよ。親は、わが子を悪く言われるのは、自分が言われるより嫌だからね。」
「親は、関係ないよ。その場での指導で充分だと思うよ。周りの子たちだってスッキリしないんじゃないの?
あの茉莉ちゃんは、よっぽどそのハンカチが欲しかったんだなあ。2歳くらいの子供みたいだなあ。
スーパーでお金を払う前から食べちゃってる子がいるけど、それみたいな話だなあ。
しかし、今の学校も大変だよなあ。
ガツンと言えなかったとしたら、悪ガキ?が一人でも居たら、学校も親も振回わされちゃうよな。」
「そうみたいだよ。悪ガキというより、駄々をこねる、わがままなな子なんだろうけどね。」
子ども同士、必ずトラブルが発生するけど、その場で解決するのが一番。指導力が学校・教師には問われるなあ。
「ケースバイケースだけどな。」

皆さんはどう思いますか?