真っ白な壁に落書きが…

落書きは、どんどん増えていく

書かれた場所は、所選ばず、広がっていく…どうしたらいいんだ?

歩道のわきの空き地は、いつの間にかゴミ捨て場に…

冷蔵庫、自転車、バイク、テレビ、ありとあらゆるゴミが…どうしたらいいんだ?

伸び放題の雑草…

ずっと続く雑草道。毎日こんな風景を見ていたら…

初めて校長として着任した友達は、学校周辺の光景に唖然とし、ただ立ち尽くすしかできなかった。「子どもたちに決して良い影響があるとは思わない」…
友達は、手始めに落書きを消そうと考えた。
だが、消すことはできなかった。
市役所の道路管理課、警察署、道路公団の許可を得なければ消せないのである。
それぞれの部署に連絡を取ると「いやあ、うちだけでは…」とたらいまわし状態。
ならば、三者を同時に学校に呼んで…
ここで威力を発揮したのが「校長」という肩書。個人では絶対に相手にしてもらえなかったであろう。
三者が協議し、道路公団が、落書きを消して、新しく塗りなおすことになった。が、
「そのままでは、新しいキャンバスを与えたことになり、また落書きされる可能性がありますね。どうでしょうか、うちの学校の子供たちに絵を描かせるというのは?」
「学校の方からそう言っていただけると、大変ありがたいです。」
ペンキ、刷毛などは、道路公団がすべて提供してくれることになった。
また、今後落書きがあった場合、簡単に消せそうなものだったら、子供たちと一緒に消してよいことも確認した。
学校で職員に報告すると、
小学生なので放課後子供たちをあまり動かせないこと、
全体像が見えない、やることがちょっと大きすぎる、
学校のやることなのかどうか…
反対もあったが、地域の教育力、教育環境、自身の思い等で何とか説得した。
6年生、2クラスの代表者、児童会と協議し、テーマはすぐ近くの「海」と学校の重点取り組みの「交通安全」に決まる。
全校児童に図案を書いてもらい、6年生がその中から選んで描くことになった。
監督は校長と用務員の二人。
全校の保護者に計画を示し、特に6年生の保護者には「子ども達の協力」を丁寧にお願いした。
さあ開始!おおよその場所割、鉛筆やマジックを使って下絵づくり。そしてペンキ塗り。
思ったようにうまく描けなかったり、ペンキ塗りしたその夜に雨が降り、湿気で絵が流れてしまったり…修正は、先生方も手伝ってくれた。
始まると、子ども達は、夢中で楽しそうに活動していた。

交通安全を担当した班

海を担当した班

やがて、新聞、テレビ放送などマスコミにも注目され、子ども達も「卒業制作」として自信をもって作成していた。
これを機に地域の学校への協力姿勢も強まったように思う。
続いて、ゴミ捨て場になっていた場所は、港湾事務所の持ち物だということが分かり、さっそく連絡をとってみた。
「ゴミ捨て場、雑草は何とかならないでしょうか?」と話してみると
「職員が二人しかいなくて、手が回らないんです。」と、
「じゃあ、一緒に草刈りやりましょうよ。私たちも手伝いますから…」
2、3日かけて、用務員さんと港湾事務所の方と三人で草刈り作業を一緒にやった。
地域の人「きれいになるね。ありがとう!」と飲み物を差し入れてくれることもあった。
「この土地、毎年の手入れが大変でしょうから、誰かに貸して管理してもらったらどうですか?」
「はい、その方が助かるんですが…」
「すごそこに、造園屋さんがあるんですよ。私もお世話になっていて、よく知ってますから、『自由に使って良い』と、話していいですか?」
「お願いします。」

その後、話をした造園屋がそこを手入れし、毎年綺麗な花を植えて、通行人の目を楽しませる花壇にしてくれた。
