「お父さん、クラスの友達で友広君を知っている?」
「ああ、あの小柄な子だろう?」
「うん、この頃元気がないんだ。」
「どうしたんだい?」
「うん、ちょっと聞いてみたんだ。」
「そしたら?」
「うん、『最近元気ないけど、どうしたの?』って聞いたら、
『僕は何をやってもみんなに勝てないし、中途半端な自分が嫌なんだ』って。」
「で、ヒデちゃんはどう答えたの?」
「うん、『そんなこと言うなよ。僕だって中途半端だよ。
みんなだってそう思っているよ。
ただ、そんなこと考えないだけじゃないのかなあ。だから、一緒に遊ぼう。』って誘ったんだ。」
「そりゃあ、ヒデちゃん偉かったね。」
「でも、僕も友広君と同じで、中途半端な自分を少し考えちゃったよ。」
「そうか。それは、ヒデちゃん大人だって同じだよ。自分に自信のある人なんてそんなにはいないよ。」
「そうなんだ。」
「お父さんも学生の頃、同じように中途半端な自分が嫌でちょっと自信をなくしていた時に、ある先生がこんな話をしてくれたんだ。
『人は縦に生きるか、横に生きるかどちらかだ。
縦に生きる人は、才能もあるんだろうが、一つの道を精進する。
横に生きる人はいろいろなことをやり、仲間をたくさん作り、自分にあった道を探す。
君は、中途半端な自分が嫌だと言っていたけど、いろいろなことをやってみな。
それぞれ中途半端でも、『塵も積もれば山となる』ではないが、沢山の中途半端を集めれば、一つの道を極めている人より高くなるかもしれないだろう?
一概に中途半端な自分を責めてどうする。いろいろなことに挑戦してみるんだよ。
遊びでも、習い事でも何でもいい。
きっとそれが役立つことがあるから。
無駄なことは一つもないよ。
新しいことに挑戦する気持ちが自信に繋がるんだよ。だから、縦と横で生き方考えてもいいんじゃないのか。
中には、斜めに生きる人もいるけどな』
そんなことを言われたよ。それからは悩まなくなったなあ。」
「そうなんだ。『中途半端もたくさん集まれば山になるのか。』」
「そういうことだ。」
「僕、友広君にも話してみるよ。」
「ちゃんと話せるか?」
「大丈夫だよ。」
「よし。」
「僕、友広君と一緒に空手でも習おうかな?」
「ああ、いい考えだ。そしたら、お父さんにも教えてくれよ。」
※縦に生きる人も、やがては横に広げて、更に自分の道を磨くし、横に生きる人も自分の好きなものが見つかったら縦に生きていく。最初の入り方の問題ですね。
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