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パナシ

377,教師になりたい!

福岡の小学校教師
 28才、女性。会社員から小学校教師に転身。

この先生は、勉強も運動も得意、積極的で負けず嫌いな性格で、高校ではチアリーダー部のセンターも…。 
全国優勝も経験…。

 就職は大手人気会社の不動産部門 営業成績もトップクラス。
 
勤めて3年、この会社で偉くなることに価値を見いだせなくなった。
もっとキラキラした毎日が送りたいと思っていた矢先に、NPOで「期間限定教師」というのがあったので、申し込んで採用に。
自分でも教師という仕事に自信があった。

 現在小学校3年生の担任。給料は20万円。以前の会社より少ないが毎日が楽しい。
クラスの子は31名。教科指導も自分なりに工夫し、何とか順調にこなしていた。

 ある時、算数で「暗算」の学習をしていた時、後ろで校長先生が見学されていた。

校長先生は
「ねえ、みんな暗算って何でやるの?筆算ができればそれで良いんじゃないの?」と子供たちに声をかけた。

「そうだよ。」という声もあったが子供たちは暗算の勉強をやる意味を考えた。

「はい!紙が使えないところでもすぐに計算できるようにです。」

「紙が使えないところってどういうところ?」

「例えばスーパーとかです。」

「はい!買い物をするとき自分の持っているお金で足りるかどうか分かるからです。」

「そうだよね。いちいち紙を出して筆算するより楽だからね。
そうか、じゃあ、みんなしっかり勉強してくださいね。」

「はーい!」

校長先生の一言で「なぜ、これを学ぶのか?」がはっきり分かった子供たちは一生懸命に学習に取り組みました。

この先生は、ここで一つ学びました。
ただがむしゃらに、分かりやすく教えようとするより、
子供たちが「なぜ学ぶのか?」学ぶ理由がはっきりすれば、学習意欲が増すということ。
 
 2週間後に大縄飛び大会があります。
負けず嫌いのこの先生は、これを機会に何とか優勝させて子供たちに達成感を味あわせたいと考えていました。

「目標は何回?縄を回す人は誰?」…

意欲に繋げようと学級会で子供たちに決めさせました。

目標300回。だが、毎日昼休みにやってもなかなか50回を超えません。

あと一週間しかない。先生にも焦りが出てきました。

うまく跳べずに泣く子、嫌々やる子、他の遊びでなかなか集まれない子。

ついに雷が落ちました。

「何のためにやるの?300回は自分たちで決めたんでしょう?やりたくないならもうやらなくて良いよ?やめよう!」

「私は、今までリーダー的なことを数多くやってきましたが、それはやる気がある者同士のが集まりでの話、やりたくない者を排除できない集団のやる気をどう育てたらいいのか?…。  分からない。…

でも、子供たちが悪いという結論は出したくない。ああ、どうしよう? どうしたらやる気を引き出せるのか?」自分の限界、大きな壁にぶつかりました。

 たまたま、NPOの期間限定教師たちが集まる機会があって、それぞれ、いろいろな話を持ち寄りました。

ある先生は、社会科で鳥取と島根を間違える子が多いので「鳥取は、島根の東という歌を作っちゃった。」とか。

そのときこの先生は、今の状況を話し「どうして良いか分かんないんだ。」と自信なく言うと

「俺、先輩の先生から、大縄跳びは『思いやりのスポーツ』と言われたよ。
運動神経がよくて能力の高い子たちがいれば勝てるというものではなく、お互いを思いやってまとまっているチームが勝つ。
今のおまえは、テンパッているから、回数ばかり気にして出来ない子供を叱るだろう。すると縄跳びが嫌になってきて気持ちもバラバラになってきちゃうからなあ。

子供が失敗したら、一緒になって笑ってやれば?こけ方がおもしろいでも良いじゃないか?
要は、『乗せ方』だろうなあ。」

この先生は、「そうか!」と思い、
次の日から授業の合間や学級の時間にちょっとした2人ゲームや3人ゲームなど取り入れ、仲間意識を少しずつ少しずつ…。

 縄跳びの練習中の掛け声も変わってきました。
跳ぶ回数よりも一人ひとりに優しい声をかけ、自分も子供たちの中に入り一緒に楽しく跳びました。

次第に子供たちも縄跳びが楽しくなってきました。チャイムが鳴ってもまだやりたそうな子もいました。

 当日の朝、学校に向かう先生は「あまり眠れませんでしたが、もう子供たちを信じて任せます。」

「時間は30秒です。では、今から開始します。ピーッ!」

1、2、3、4、5、6……

「はい、そこまで!ピ ピ ピー!」

結果発表 それぞれの回数が読み上げられました。緊張の一瞬です。

 1組120回 2組125回 3組113回 4組121回

「やったー!やったー!先生、2組が優勝したよ。やったー!」

先生に駆け寄る子供たち…。
先生の目からも涙が…。

「子供たちって、すごい能力あるんですね。こちらの持っていき方次第でもっと伸ばせるんですね。
出来ないのは、子ども達が悪いんじゃない。指導者の問題なんですね。子供たちって本当にすごいですね。」

 NPOの期期間限定教師の期限は、あと一年。それからどうするのか?
この先生は、1年後改めて採用試験を受け教師を目指そうと思っているという。

      参考:2018,1,24Eテレ人生デザインU29から