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「ヒデちゃん、今日は、学校で何か楽しいことがあったかい?」お父さんが突然ヒデちゃんに聞いてきた。
「今日は、ねえ、担任の先生が出張で、教頭先生が来てくれたんだ。」
「へえ、そうなんだ。」
「教頭先生は、お話が上手で、みんな好きで楽しみにしているんだよ。」
「そりゃよかったな。」
「うん、今日もね、教頭先生にみんなで『お話してください』と頼んだら、少しだけしてくれたんだよ。」
「そりゃあよかったな。で、どんな話をしたの?」
「全部は覚えてないけど…」
ある国の王様が、病気になった。
何とか治したいと思って、
占い師に、『どうすれば治るのか?』聞いた。
占い師は
『この国の中で幸せに暮らしている人のシャツを借りてきて、王様が着ると病気は、よくなります。』と答えたんだって。
王様は、家来にそのことを告げ
『この国の幸せそうな人を探して、そのシャツを借りてこい!』と命令したんだ。
家来が、最初に見つけた人は、お金持ちの人…
すると、近所の人が『あの人は、お金があるけれど、それをずっと守ろうとして、ケチな暮らしぶりだよ。一銭だって出さないからなあ。決して幸せじゃないよ。むしろ、かわいそうだよ。』と。
次に家来は、100歳くらい長生きしている人を見つけた。
『この人は、幸せなんだろうなあ。』と思っていたが、
周りの人たちは、『あの人は長生きだけどもう自分で稼ぐことができないから、毎日乞食同然の生活で、決して幸せじゃないよ。』…
次の人は、お金もそこそこあって健康で元気な人。『この人は、きっと幸せだろう。』…
でも、周りの人たちは、『あの家は、奥さんが我ままで、遊んでばかりで、とても幸せだとは思わない。』
家来は、次の人に当たった。幸せそうな夫婦。『あの人たちのシャツを借りよう。』
だが、周りは、『あの夫婦は、子供がいないし、家では、ののしりあって喧嘩ばかり…。』
『ここもダメか。』
なかなか幸せな人が見つからず、困った家来が途方に暮れていると、
みすぼらしい家の中から、大きな笑い声が…
『うん、この人こそ幸せな人だろう…この人のシャツを借りよう。』
家来は、家の中に入ってみた。
なんと、その人は、裸で暮らしていた。
という話。
みんな笑っちゃったよ。
それで教頭先生は、
「この童話の中では、家来がようやく見つけた幸せ者は、そもそもシャツを持っておらず、
『着る者が幸せになれるシャツ』など、この世に存在しない。」って言ってたよ。
「その話、お父さんも昔聞いたことがあるなあ。確か、トルストイだったかなあ?」
「僕は、この話を聞いて
『幸せって、何なのか?』ちょっとだけ考えちゃったな。」