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「また、こんな事件があったのか?ふーん。」
「どうしたの?お父さん?」
「うん、駅のホームで喧嘩があってね。その日は雨で、傘で刺された人が亡くなったんだってさ。」
「そうなんだ。」
「いいかい、ヒデちゃん、人の体の軸というか、真ん中は、みんな急所なんだよ。
そこは、上から攻めて来るものには、ある程度は、守れるようになっているけど、下から突き上げられたりしたら、とても弱いんだよ。」
「そうなの?」
「目、鼻、あご、喉、鳩尾(みぞおち)、臍、金的、太腿の内側…」
「ああ、本当だ。そうなんだ。なるほどね。」
「だから、傘のような細いものを棒で刺すように突いたら…、
例えば、喉を突こうとした時、外れても、顎、口、鼻、目のどこかの急所か穴に入ってしまうんだよ。
だから怖いんだよ。」
「ああ、。確かにそうだ。」
「しかも、お酒が入っていて、自分の手で直接刺すわけじゃないから、力が入っちゃうんだろうなあ。」
「ふーん。お父さん、この人たちも喧嘩するために駅のホームに行ったんじゃないから、『ごめん!』とか『すみません!』で避けられなかったのかなあ。」
「ヒデちゃんだったら、そうするかい?」
「僕は、喧嘩が好きじゃないから、きっと、すぐに謝っちゃうなあ。」
「そうだね、つまらんことは、『負けるが勝ち』でいいと思うよ。でも、譲れない大事なことは、時には喧嘩することも必要だけどね。」
「うん。」
「不審者に急に襲われたとき、傘を持っていたら、ぱっと広げて、何回も突くといいらしいよ。広げると相手に取られにくいし、突いても深く入らないから…」
「そうなんだ。」
「ヒデちゃん、ついでだから、以前に、こんな事件もあったんだよ。」
「何?」
「最近は、あまりないけど、暴走族のバイクの音がうるさいからと、道路にゴールテープのように横向きにロープを張ったんだよ。」
「危ないよね。お父さん。」
「そうなんだ。夜で視界も悪いし、ロープなんて見えない、それに、スピードも出ていたから、ロープがハンドルを持つ手に沿って、首に入って、一瞬でバイクから投げ出されて…即死。」
「恐ろしいなあ。」
「バイクを止めるつもりでやったんだろうけど、結果的には、殺人に…。」
「お父さん、自転車でも、きっとそうなるよね。首にロープが必ず行くよね。」
「そうだ。」
「僕、バイクに乗るのは、止めることにしたよ。」
「ああ、当分先の話だろうけどね、それが良いよ。」
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