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ヒデちゃんは、休み時間に、先生に質問していた。
●「先生、『十二単衣』って、知ってますか?」
「ああ、知ってるよ。平安時代の女性の服装だろう?」
「僕ね、綺麗だと思うけど、なぜそんなに重ね着するのかなあ?当時は、そんなに寒かったのかなあ?と思うんですけど…」
「ああ、ヒデちゃん、そうかもしれないぞ。今のように、電気もガスも灯油もないから、暖をとるのは、炭だけだからね。」
●「先日、家族で旅行に行った時、高速道道路の料金所に『ETC』と『一般』の表示があったの。
お父さんは、『ETC』じゃない『一般』の方に入ったの。
なぜ『ETC』じゃない方を『一般』と表示するの?
『現金』とかの方が分かりやすいのにね。
●「先生、今日、音楽の時間に習った『月の砂漠』の歌なんですけど、月に砂漠はあるんですか?この人たちは宇宙人ですか?」
「ヒデちゃん、これは、『月明りに照らされている砂漠』の情景を表しているんだよ。
王子様とお姫様が二人っきりで月明りの下を歩いている。これが昼間だったら、寂しさが消えて、幻想的な雰囲気が無くなっちゃうだろう?」
「じゃあ、『二人きり』というのが大事なんですね?
月や砂漠はそれを盛り上げているんですね。」
「ああ、そういうことだ。ヒデちゃん、もういいかい?先生も疲れちゃったよ。」
「はい、僕、この歌が好きになりました。僕が王子様で…お姫様が…」
「誰なんだい?お姫様は?」
「ええと、ええと…」
「ハッキリ言えよ。」
「でも、恥ずかしいなあ。」
「ハハハ、じゃあ、あの子ということにしておくか?」
「はい、誰にも言わないでくださいね。」
「ああ、言わないよ。」
●「先生、マスクを取ると、何故、ひどい顔に見えるんですか?」
「ヒデちゃん、『ひどい顔』はないだろうよ。」
「でも、僕が考えていた顔じゃないから、そう言ったのです。」
「それはね、マスクで見えない口元をこちらが『こうだったら美しく見える』と勝手に想像しちゃうからだよ。
期待値を高くしちゃうというのかなあ。
口の大きさ、形、歯並び、唇の厚さ…。
ヒデちゃん、マスクだけじゃないぞ。
サングラスをして、目を隠している人がそれを外したら
『あれっ?思っていた顔じゃなかった。
印象が変わった。』ということもよくあるよね。」
「そうですね。普通のメガネでも取った時の顔は、気が抜けたサイダーみたいですからね。先生。」
「それは、ちょっと違うかもしれないけどな。」
「先生、ワンちゃんやネコちゃんたちもマスクやサングラスしたら、もっと可愛らしく見えるかもしれないですね。」
「さあ、どうかなあ?」
「ヒデちゃん、君は、『窓際のトットちゃん』のような子だね。」
「先生、それは、誉め言葉ですか?」
「もちろんだよ。普通の子が気が付かないようなことによく目が行くなあと感心するよ。」
「えっ?僕は、普通じゃないんですか?」
「いや、そういう意味じゃないよ。」
「じゃあ、僕、天才ですか?」
「ああ、そうかもな。」
「そうだと言ってください。」
「ああ、天才だ。」
「良かった。」