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「お父さん、今度釣りに行くとき、一緒に連れってってよ。僕やったことないから、やってみたいんだ。」
「ああ、いいとも。そうだな、まずは川がいいかな?」
「海じゃダメ?」
「ダメじゃないけど初めてだったら川が良いよ、少し慣れたら海っていうのが良いよ。」
「でも、お父さん、川って汚くない?」
「ちょっと大きな川に行けば大丈夫だよ。」
「だけど、どうして川は汚いの?」
「お父さんが子供の頃は、田んぼや畑に農薬も使わなかったし、水も奇麗で、ホタルやドジョウやタニシなど色々な生き物がいたよ。
『台所は海の入り口』と言われるけど、昔と違って生活排水の質が変わってきたんだよ。」
「生活排水って?」
「台所の洗いものや調理で出る水、洗濯機の水、お風呂の水など人が生活のために出す水のことさ。
昔は今ほど洗剤を使わなかったからね。」
「どうして洗剤を使いすぎるといけないの?食器なんか綺麗になっていいんじゃないの?」
「うん、水と油は混ざらないの知っているよね?」
「うん。」
「ところが、洗剤は、水と油をうまく混ぜ合わせちゃうんだよ。
混ざりあったものは、『水のような油』とか『油のような水』ということになり、そのまま分けられないで川まで行っているからなんだよ。
水と油の境界をなくしてしまうので『界面活性剤』と呼んでいるけどね。
お皿や鍋やフライパン、衣服、お風呂など奇麗になることはいいことなんだけど、洗剤を多く使いすぎるとどんどん川や海が汚れていくってことになるんだよ。
洗剤の代わりにお湯を使えば、一時的に油が融けて落ち、水と油は混ざらないからいいんだけど、これだけでは取れない汚れもたくさんあるからね。
一番良いのは、川に直接排水を流すんじゃなくて、浄化装置を通せばいいんだろうけどね。それもお金がかかるからなあ。」
「そうなんだ。」
「でも、界面活性剤は、地球環境を汚す悪者のように受け取られることが多いけど、自然の中にも界面活性の働きをもつものは結構あるんだよ。
例えばマヨネーズは、油とお酢で出来ているけど、ドレッシングのように分離しないのは、卵が界面活性剤の働きをしているからなんだよ。その他にもチョコレートやアイスクリームも界面活性剤なしには存在しないし…。
その他にも様々な分野の産業で役立ち、欠かせない存在なんだよ。もはや界面活性剤なしでは、私たちの生活は成り立たないともいえるよ。
悪者扱いされて何だか可哀想だけど…。」
「難しいね。お父さん。僕たちの生活に必要なんだけど、使った後が環境汚染になるのか…。」
「どうする?ヒデちゃん?来週の日曜日、晴れたら、川釣りに行ってみるか?お父さんもちょうど空いているし。」
「本当!わー、嬉しいなあ。沢山釣れるかなあ。」
「そりゃあ、腕次第だなあ。」
田貫湖からの富士山。ここはきれいな水だ。釣れなくても景色だけでも十分。