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パナシ

77,もう一つの考え方

 今日は日曜日なので、ヒデちゃんは、ちょっと冒険を楽しもうと遠くの公園まで自転車で出かけました。
 出かけるとき「自動車に気を付けるんだよ!左側通行するんだよ!」お母さんがしつこいくらいにヒデちゃんに言いました。
 案の定、大通りに出ると、自動車の数がどっと増えました。自動車の通りが激しい道路なので、ヒデちゃんは、公園に着くまでの間、後ろから来る車に何度もクラクションを鳴らされました。
「坊や、危ないぞ!」と大声を出す運転手もいました。
歩道も狭く、凸凹状態。自転車専用帯がないため、仕方ないのですが、後ろを気にしながらの運転は、家の近くをいつも走っている以上に怖く感じました。
 ようやく公園が見えてきたその時です。後ろからスピードを上げて走って来た自動車がバシャッと、昨日の雨で出来た水たまりの泥水を跳ね上げていきました。
 「わあ!」ヒデちゃんは、まともにその泥水を被ってしまいました。ヒデちゃんは、その時ほど自動車やそれに乗っている人を恨めしく思ったことはありませんでした。
 「くそっ!もっとゆっくり走ってくれよ。あーあ。」
せっかくのお出かけが台無しになってしまいました。しかも、泥を浴びた洋服は、今日おろしたばかりでした。
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 次の日は、学校がありました。雨が強かったので、お父さんが会社へ行くとき、少し回り道をして学校まで自動車で送ってくれることになりました。
 自動車の助手席に乗ったヒデちゃんは「お父さんありがとう!雨が強いから、傘を差して学校まで行ったら、着くまでにビショビショになっていたかもね。」と言うと
 お父さんが「こんな日は、自動車の方も気を付けないと大変なんだよ。バイクとか、ほら傘を差した高校生達が片手で運転しているだろう。水を跳ねて掛けてもいけないし、もし、あの人たちがお父さんの自動車にぶつかってきたとするだろう?そうしたら、こっちが悪くなくても全部お父さんの責任になちゃうからな。
 「えっどうして?」
 「大きい方の責任というか、交通事故で怪我をするのは小さい自転車の方だからね。つまり、大きい方がより注意すれば事故は防げるということ。
 それに、自動車は、必ず保険に入っているだろ?ところが自転車やバイクは保険に入っていない場合が多いんだよ。」
 お父さんの説明にヒデちゃんは「そうか、そういうことか。」少し分かったような気がしました。お父さんは続けて言いました。
 「雨の日とか、急いでいるときは、本当にイライラするよ。追い越そうとして、事故を起こす場合もあるしね。言い方悪いけど自動車を運転している者にとってバイクや自転車は本当に邪魔なんだ。」
 「そうなんだ。でもお父さん、昨日僕が自転車で公園まで行ったときは、自動車の方が悪いと思ったよ。」
 「そりゃ、そうだろう。誰だって置かれた立場や状況で、ものを考えるんだからね。お父さんだって自転車だったら、自動車のことを悪く思うよ。」
「そうなんだ。」
 「でもなヒデちゃん、ちょっと難しいけど、人の考え方は、置かれた立場や状況によって変わるということ。
 もう少し詳しく言うと、お父さんが言っている人の考え方というのは、『感情』ということかもしれないな。車に乗っていると、歩行者や自転車がとても邪魔に思えるし、逆に自分が歩行者だったら車がとてもわがままに思うだろう。
 その考え方、つまり『感情』は、立場や状況によってコロコロ変わるってこと。ぶれやすいんだよね。ぶれるって分かるか?」
 「うん、揺れるってこと?」ヒデちゃんが答えると、お父さんは続けました。「本当は、考えというものは、『感情』ではなく『理性』で無ければならないのかもな。『理性』はぶれない。
 つまり、相手の立場も考えられて、それで相手の人を恨むよりも、お互いが良くなる方法を考えたりすることかな。」
 「よく分かんないけど、そうなんだ。」ヒデちゃんは、自信なさそうに答えました。
 「例えば、道を広くしたり、自転車専用帯を作ったりすれば、自転車も自動車も快適に走れるよね。そういうことを考えることだな。」
 「ふーうん。」
 「『感情』とか『理性』とかは、今のヒデちゃんには難しいけど、そのうちに分かってくるさ。
 自分の立場での考え、相手の立場での考え、そして、もう一つは、両方にとってもみんなにとってもよい考えというのがあるんだよ。」
 「そうなんだ。三つもあるのか。」
 「お父さんは、ヒデちゃんに『人を恨まず、みんなに良いことを考えろ!』それを伝えたいなあ。天の声だと思ってさ。」「うん、分かった。」…
 「お父さん、学校だよ。ありがとう。何となく分かった気がするよ。」
 「傘は持った?帰りは自分で帰ってくるんだよ。じゃあ、しっかり頑張ってきなさい。行ってらっしゃい!」
「はあーい。」…。
          
 ヒデちゃんの後ろ姿を見送った後、、お父さんはちょっと不安な気持ちに駆られました。
 「まさか、ヒデちゃん道徳の授業で、『感情』とか『理性』とか本人が分かり切っていないことは言わないだろうなあ。よけいなこと言っちゃったかな?」
それが心配のお父さんでした。
      浄水器、どれがいいか迷ってる時はコレ
きれーい!これも感情なのか。きれいという定義は何なんでしょうね?
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