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「お父さん、虹の色って、なん色なの?」
「7色だろう?『七色の虹』とか『虹の七色』とか言うからなあ。」
「僕、この虹の写真を見ても、どうしても7色に見えないんだよ。」
「どれどれ。」
「お父さん、本当に7色に見える?」
「うーん、難しいなあ。せいぜい3つか4つだなあ。」
台所で料理を作っていたお母さんが
「それね、見えなくて当たり前なのよ。国や地方によっても違うのよ。日本では学校で『赤、橙、黄、緑、青、藍、紫』の7色と教えているからよ。」
7色:日本・韓国・オランダ
6色:アメリカ・イギリス
5色:フランス・ドイツ・中国・メキシコ
4色:ロシア・東南アジア諸国・アフリカ
3色:台湾のブヌン族・アフリカのショナ語族
2色:南アジアのバイガ族・アフリカのバサ語族」
「日本でも、古くは、中国と同じ5色。
沖縄地方では2色(赤、黒または赤、青)。
江戸時代末期に西洋科学を取り入れ始めてから7色になったみたいよ。」
「7色って誰が決めたの?お母さん?」
「ああ、それはね。万有引力で有名なニュートンよ。」
「あのニュートン?」
「ニュートンは最初、虹は、5色だと思っていたし、当時、はっきり虹の色が7色であると認識することは無理があったけど、音楽と関係づけて『各色の帯のはばが、音楽の音階に対応している。』と、無理やり7色にしたんだって聞いたわよ。
これが今もずっと残っているんじゃないの。」
「そうなんだ。僕は、全世界共通かと思っていた。ありがとう、お母さん。」
「お父さん、虹はなぜできるの?」
「それはだな、太陽光は、7つの色が集まっているんだよ。太陽光をプリズムなどを通すとそれぞれ波長が違うから、曲がり方が違ってくる。それが虹なんだよ。
虹以外でも、水に油をたらすと、虹色になるだろう。玉虫やミミズの虹色の身体もそうだね。」
「うん。」
「赤色は、波長が長くて曲がりにくいので自動車のブレーキランプや信号の止まれに使われているのは知っているよね。」
「うん、前にお父さんが教えてくれたからね。」
「テレビの後ろにRGBと書いてある所があるだろう。」
「うん。」
「虹の7色の赤、橙、黄、緑、青、藍、紫のうちの赤(Red)い部分、真ん中の緑(Green)、そして青(Blue)い部分のことで、この三つの量を変えると全ての色ができるんだよ。光の三原色と呼んでいるね。」
「なるほどね。良く分かったよ。お父さんもう一ついい?」
「ああ、いいよ」
「虹という漢字は、なぜ虫偏が付くの?」
「それはね、古代中国では、虫の字の意味する範囲が今とは違っていたんだよ。
虫の旧字体は蟲で、もともと虫(キ)という漢字が別にあって、蟲はそれを三つ並べた字なんだよ。」
「こんな字は、初めて見たなあ。」
「虫という漢字の由来は、ヘビをかたどった象形文字で、本来はヘビ、特にマムシに代表される毒を持ったヘビを指すんだ。
読みは「キ」であって、「蟲」とは明確に異なる文字なんだよ。」
「そうなんだ。」
「古代中国では生き物を、外見から、「鳥」「獣」「魚」に大きく分け、このどれにも当てはまらない小動物の総称を「虫」と呼んでいたんだよ。」
「大ざっぱだね。」
「まあね。蝦(えび)蛤(はまぐり)蛙(かえる)は、鳥・獣・魚のどれにも分けられないことから、「虫」として扱われ、そこから虫偏がついた、という訳なんだよ。」
「それで蛙は、虫偏が付くのか。」
「ほかにも、蛇(へび)、蜥蜴(とかげ)、蠍(さそり)などの“爬虫類”などや、水場にいる蟹(かに)、蜆(しじみ)、蜃(おおはまぐり)にも虫がつくよね。」
「ああ、確かに。」
「虹という現象を、古来の中国人は龍が作り出すものと考えたんだよ。つまり、虹という字は、ヘビ(虫)が、大空を貫く(工)と書く。龍は巨大なヘビと考えられていたからね。」
「そうなんだ。だから、虫偏が付くのか。分かったよ。お父さん」
「この「虹=蛇(龍)」という考え方は、全世界的に見られるし、虹は古代では珍しい色彩と、できる理由が不明なことから、神の領域として捉えていたんだね。」
「なるほどなあ、お父さん、ありがとう。今度、昔の人の気持ちになって虹を見たら少し怖いかなあ。」
「それは、どうかなあ?龍がいないってことを、もう知ってしまっているからね。」