芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は皆さんご存じだろうと思いますが、
主人公は、犍陀多(カンダタ)という大泥棒。地獄に落ちた彼の前に、お御釈迦様が現れます。
彼が以前に蜘蛛を助けていたことから、お御釈迦様によって救いの手が差し伸べられるのです。
それにすがる彼ですが、しかし彼の後から、地獄の亡者たちも糸を掴んで上がってきていたのです。糸が切れることをおそれ、彼は「来るな、この糸は私のものだ」と叫びます。
すると突然糸は切れ、地獄の亡者もろとも、彼は再び奈落の底へと落ちていったのです。
この「蜘蛛の糸」の話を思い出すたびに、お釈迦様から差し出された蜘蛛の糸を「自分だけのものにしたい」気持ち、また「そういう気持ちを捨てたい」という思い,その両方で考えさせられます。
身近なことで言えば,お金も、幸せも、健康も、いい大学も、いい会社も、成功も…「自分だけに…」。…これがなければ戦争や争いも無くなるはずなのに…人間の貧しい性なんでしょうね。
子どもの頃、よく親から「蜘蛛は殺すな。人が嫌がる蚊や蠅や虻などの虫を捕ってくれるんだから…」と言われていたので、虫の中でも特別な存在でした。
太めの針金や細い篠竹などを丸めてテニスのラケットのような輪を作り、柄をつけて少し長くします。蜘蛛の巣をこの輪で掬うと簡単な虫取りネットができます。トンボやセミくらいなら捕ることができます。二重、三重にすると、かなり強力なネットになります。
その蜘蛛がちょっと嫌になったのが、小学校の5年生の時です。担任の先生が、よく本を読んで聞かせてくれました。それが毎日の楽しみでした。
ある日、江戸川乱歩の小説「緑の館」を読んでくれました。その中に「目が覚めたら、ベッドの下、床一面に蜘蛛たちがいて、それを踏みつぶさないと起きられない…」それが強烈に、蜘蛛のイメージを低下させてしまったからです。
最近は、犬の散歩で行くいつものコースに、馴染みの蜘蛛が出来ました。じっくりと良くネットを張るのを見ていると、感心させられます。
先ず、縦、横・斜めの糸を張り、それが交わった中心から、少しずつネットを編んでいきます。その時、縦糸や横糸に足をカギ棒のようにうまくからませて、セーターでも編むかのようにしているのです。
中心から少し編み上がったら、今度は大枠を外から内側に編んできます。最初に編んだ中心からのネットまできて完成です。後は獲物を待つだけです。
大きな獲物や強風でネットが破れても、すぐに修理します。…
あの大きなお尻にどれだけの糸を貯めているんだろうか?それも、糸で貯めているのか?外に出るとき糸になるのか?どちらなのか今度聞いてみようと思います。
ところで、蜘蛛の糸ってどれくらいの強度なのでしょうか?
山形にあるスパイバー(Spiber株式会社)では、蜘蛛の糸の強靭性に着目し、DNA解析したうえで、人工蜘蛛の糸を商品化しています。そこによると、クモの糸は鋼鉄の340倍強靭性が高く、伸縮性はナイロン以上、耐熱性300度以上。まさに驚異の糸だそうです。
※人工合成クモ糸素材を開発するSpiber株式会社(以下、スパイバー)は、NASA、米軍でも無理とされていた「クモの糸」を人工的につくり、繊維に変える技術に挑戦し、着実に成果を上げています。
クモの糸は鋼鉄の340倍強靭性が高く、あらゆる産業に応用可能なフレキシビリティーな素材であり、革新性を挙げればキリがありません。
「これまでの石油由来の繊維を置き換えてしまう、100年来の “夢の繊維” 」との呼び声も高いです。
スパイバーの創業者、関山和秀さんは慶応大生だった2004年9月より、人工合成クモ糸素材の研究を開始し、これを事業化するため大学院在学中の2007年9月に会社を設立。
2015年10月にはベンチャーキャピタル等から約96億円の巨額な資金を調達し、現在は産学官と連携しながら世界初の工業化を目指しています。
※またそのほかにも、蜘蛛の糸より強靭な蓑虫の糸も注目されています。
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