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パナシ

292,ならず者


 困った奴がいたものだ。

村中で頭を悩ませている。勝手に家に入り込んで食べ物をあさる。勝手に糞をしていく。マーキングのためか尿まで…。

捕まえようとしてもすばしっこく逃げる。罠を仕掛けても難なくかわすので捕まえられない。メスがいると、しつこく追いかけて犯して回る。

「何処の奴だ?」だが、誰も知らない。
風体を言うと
「そうだよ、茶色の…そいつだ。」みんなの意見が一致する。

家の扉を空けておかない。食べ物を出しておかない。など防衛策はとっているが、一向に効果がない。

ちょっと気を許した瞬間に入り込まれてしまう。
弓矢やパチンコで打つか?とも考えてしまう。

長老が言うには、「でっかい声で怒鳴りつけるんだよ。そしたらもう来なくなるから…」

だが、村の中で大きな声で追い払うのは憚れる。近所迷惑だし、今時そんな声を出している人などいない。
奴は、そのことをよく知っているのだろうか?

たまたま、奴の姿を写真で撮った。

「うん?よくよく見ると、どこかの国のリーダーに似ているなあ。」
のしのしと、堂々と歩く姿はまさにそっくり。

「俺のものは、俺のもの、他人のものも俺のもの」それもそっくり…。

「この野郎!」と言うと

「もともとは、お前ら人間だけのものじゃねえんだよ!」
そんな反撃がきそうな雰囲気で睨んできた。
可愛い我が家の小猫は、私の後ろで怯えていた。


この野郎!」「この野郎!

毎日、大きな声で怒鳴る。

そういう私の練習が最近始まった。

この野郎!

この野郎!この野郎!
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