カテゴリー
パナシ

66、まさかの坂

 

  一緒に飲んでいた先輩が何やらぼそぼそ言っているので、聞いてみると「君たちを見ていると、仕事もできて、毎日順調そうで羨ましくなるよ。だが、順調だからこそ気を付けた方がいいぞ。」「どういうことですか?」先輩は、こんな話をしてくれました。

 今から30年位前の話、仲の良かった同僚が、急にいなくなった。家族と連絡を取り合っても、全く行方が分からない。手掛かりもなく、警察に捜索願を出す。

 2週間位経った頃、警察から連絡が入り、あるマンションで飛び降り自殺があり、身元不明、家族からの届の内容と似ているとのこと。

 上司から確認に行くよういわれ、警察まで見に行ったが、写真だけでは何とも言えず、保管されている葬儀屋まで遺体を見に行くことになった。

 見せられた遺体は、似ているようだが少し違う。いろいろな角度から見た。死後硬直もあり、やはり、判断が難しく、『yesと言えない限りnoだ。』そう思い、違う!と言い切って帰ってきた。

 何の手がかりもなく、また2週間位経った。とある日、彼が、ひょっこり出てきたのである。
何かのトラブルに巻き込まれ、連絡さえできなかったという。 

 結局、その同僚は、責任を取り、辞表を出して止めていった。

 「優秀な社員だったよ。彼には、夢もあったし…。君たちを見ていると、『まさかの坂に気を付けてくれ!』と本当に思うよ。」

 「そんなことあったんですか。」

 「これから先、何があるかわからない、誰でもそうだ。『自分は大丈夫』と思っていても、魔が差すというか、予期せぬことで人生が狂わされることがあるからなあ。…そうなると、自分だけでなく、家族や職場、知人、恩人、みんなに迷惑をかけるからなあ。」

盃を口に運びながら先輩はしみじみそう言いました。

 「そうですね。まさかの坂ですね。」…。

「じゃあ、カラオケ、行くか?」「いいですね。」

僕たちも刺すよ。近寄らないでね。

僕たちに刺す気はないけどね。

180日間保証付き+技術サポートあり!
充実なサポートが付いているのでパソコン初心者の方、購入に不安がある方にも安心していただけます。

タニタオンラインショップ