頭に人工知能を埋める前に
「進君!進君!待ってよ!」…
「太郎君、早く来てよ。」
「進君!待ってよ!」
「進君!どうしたの?走るのが急に速くなったね!今まで遅かったのに…、本当は、速かったんだ。」
休み時間に校庭に走り出す進君を追いかけた友達の太郎君はびっくりしました。
「人が変わったみたいだよ。」
「本当に進君なの?」
「先生!はい!」「はい!」
教室では、進君が積極的に手を挙げ、先生の質問に大きな声で答えていました。
先生は、いつものように「進君には答えられないだろうな。」と思っていたのでびっくり。
「進君、正解だよ。すごいね。」クラスのみんなも驚きました。
「今までの進君と違うみたいだ。」
「本当にあの進君?」
それ以来、進君は、みんなのあこがれの的になりました。
どうされました?
実は…、三日前、進君は、お父さんとお医者さんに行きました。お父さんは、お医者さんに、進君の頭にAI(人工知能)を埋め込んで欲しいと頼みました。
それは、進君があまりにも発達が遅れていると思っていたからです。
お医者さんは「出来ないことはないですけどね、お父さん、人の発達はそれぞれ差がありますよ。周りと比べたらきりがありませんよ。」
「いや、何が何でもやってもらいたいです。先生は、あの子のことが分かっていないからそんなことが言えるんですよ。普通の子だったら頼みませんよ。ぜひお願いしますよ。この通りです。」深々とお父さんは頭を下げました。
この通りです
「お父さん、お金もかかりますよ。」
「先生!お金の問題じゃありませんよ。お願いしますよ。先生!」
「うーん、そうだなあ。」
先生はしばらく考えてから
「じゃあお父さん、これはどうですか?最初からAIを入れるより、脳の働きを活性化させる薬を、まず飲ませて様子を見ませんか。
どんなに賢い人でも脳の一部しか使っていないのですから、それを活性化させるだけでも違いますよ。
AIは、最終手段ということでどうですか?」
「えっ?そんな薬があるんですか?私も使いたいです。」
「何を言ってるんですか、おとうさん、進君だけですよ。」
「はい。」
「それじゃあ、お父さん、お薬ということで良いですね。」
「はあ、はい。」
「それでは、今から調合しますのでしばらくお待ちください。」
待合室で、お父さんは、進君に「先生が頭の良くなる薬を作ってくれるそうだよ。」
「じゃあ、お父さんも飲んだ方が良いね。」
「今回は、お前だけだ。効果があったらお父さんの分も先生に頼むかな。」
「お母さんもだよ、お父さん。」
「ああそうだな。」
呼ばれて診察室に入ると、先生が進君に「これは脳を活性化させる、つまり脳の働きをよくする薬なんだが、飲んだら、たちまちに頭が良くなる薬ではないからね。進君の脳の使い方しだい、考え方しだいなんだよ。分かるかな?」
「はい、何となく…。」
「進君が何かをしたいと考えることが大事なんだよ。そうでないと働かないからね。」
「分かりました。じゃあ、今、家に帰りたいとかでもいいんですか?」
「もちろんだよ。どうする?今、ここで飲んでいくかい?」
「お父さん、僕、ここで飲みたい。家まで待てないよ。」
「お父さんどうですか?」
「はあ、進がそう言うなら、先生お願いします。」
「じゃあ進君、こちらに来て飲んでくれるかな?」
僕も自動で動けるといいなあ。疲れないし
それ以来、進君は、自分の意思を持ち、色々なことに積極的に取り組みました。やることなすこと上手く行き、お父さんもお母さんも大喜びでした。
ただ、食事の量が増え、すごく疲れやすくなったようで、学校から家に帰ると、もう眠そうな感じでした。
お父さんは、お医者さんに、お礼と進君の様子を報告がてらそのことを訊ねてみました。
「お父さん、分かっていらっしゃると思って説明が不足していましたが、脳が活性化すると、そこから指令を受けた身体の様々な部分が活発になります。時には、そのものの限界を超えることもあります。
例えば、もっと速く走りたいと思ったら筋肉に無理な命令を出しますから、足が壊れてしまうこともあります。
今の量の薬でも本人の気持ちが極度に強かったらその可能性がないとも言い切れません。AIの脳だったら進君は死んでいたかもしれませんね。」
「えっ?そうなんですか?じゃあ、先生これからはどうしたら良いですか?」
「今のままでもうしばらく様子を見ましょう。」
「そんなことで大丈夫なんですか?効果を弱める薬はないんですか?」
「有りません。」
「そんな、先生そういう薬を作ってくださいよ。」
「大丈夫です、絶対に大丈夫です。」
「先生、どうしてそんなことが言えるんですか?」
「実は…」
「実は、何ですか先生?」
「実は…お父さんだけに言います。約束してください。進君や奥さんには絶対に言わないと。」
「はい」
「守れますか?」
「約束します。」
「実は、あの薬は、ちょっと値段の高いスタミナ剤だったんですよ。」
「えっ?騙したんですか?どういうことですか?」
「騙したわけではありませんが、進君を見たときに、進君に必要なのは、薬より自分で何かをやろうとする意思、意欲だと思ったんですね。
ですから本人は薬の効果だと思っているかもしれませんが、それは進君が意思を持って行動することが出来るようになったということですよ。」
「先生!それは…どういうことなんですか?」
「お父さん、進君には、もともとそういう能力があったということなんですよ。
ですから、ただのスタミナ剤と知ったらがっかりして、また元に戻ってしまうかもしれません。なので、お父さんの胸の内にだけ仕舞っておいてください。」
「はあ、はい、先生、分かりました。食事も睡眠も心配いらないですね。」
「よく頭と身体を使っている証拠ですよ。安心して見守ってください。」
「先生、ありがとうございました。」
お父さんには内緒だが、実は、お医者さんは脳活性化の薬を少しは使っていました。その薬は徐々に体内から消えていくものでした。
お医者さんは、今度、またお父さんが来たらどんな策を取るのでしょうか?
さあ次はどうしようかな?
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